SIM が手元に届くまで
eSIM はオンラインで購入し、通常はメールでインストール用コードとして届く。発送されるものも、受け取るものもない。コードを読み取り、プロファイルが2回線目としてスマホに追加され、オンにするまでそこに待機している。物理的な旅行用 SIM は物体なので、誰かが手渡す必要がある。出発前に郵送するか、現地に着いてから空港や街の店のカウンターで受け取るかだ。面倒が生じるのは後者のルートだ。カウンターには営業時間があり、遅い時間の到着だと閉まっていることが多い。行列が最も長くなるのは、飛行機1機分の乗客がちょうど入国審査を終えたまさにそのときで、しかも国によっては現地 SIM にパスポート登録が必要で、列がもう1つ増える。さらに、店を見つけて支払い、カードを差し替えるまでは、空港を出てもデータ通信は使えない。事前に注文しておく物理カードも話は簡単だ。郵便で届き、装着は数秒で終わる。行列は必須ではなく、避けられるものだ。
プランのカウントが始まるタイミング
旅行者がつまずきやすいのが有効化で、2つのルートは逆方向に失敗しがちだ。eSIM では通常、旅行前にプロファイルをインストールし、渡航先で回線がネットワークに接続するまでプランは眠っている。ここには自分で制御できる余地がある。出発前日に自宅の安定した Wi-Fi でインストールすれば、プランは現地に着いた時点で動き出す。落とし穴は、すべての通信事業者がそう定義しているわけではないことだ。なかには有効期間を初回接続ではなくインストール時点から始める事業者もあり、2週間前に読み取ったコードは、気づかないうちに2週間分を費やしていることになる。何かを読み取る前に、その具体的なプランにどちらのルールが当てはまるかを確認したい。物理的な観光用 SIM も、同じ曖昧さを別の場所に隠している。カード自体に使用期限があり、プランは多くの場合、最初に挿したときか最初の発信時に始まる。空港で買えば、カウントはその瞬間から動く。何週間も前にオンラインで買えば、期限を見張るべき物を手にしていることになる。どちらでも原則は同じだ。プランが許す範囲で出発にできるだけ近いタイミングで有効化し、何をもってカウント開始とするかを勝手に決めつけず確認する。
自分の番号と、新しいスマホへの移行
どちらのルートでも自分の番号は活かしたままで、その仕組みは宣伝文句が示すよりずっと似ている。旅行用 eSIM は2回線目として追加されるので、自宅の SIM はスマホに残り、データ通信が旅行用プランを通るあいだも通話と認証コードを受け取り続ける。物理的な旅行用 SIM も、スマホに2つ目のカードスロットがあれば同じだ。両方のカードがトレイに収まり、どちらがデータ通信を担うかを自分で指定する。本当の違いは、スマホが変わるときに現れる。物理カードはハードウェアだ。取り出して別の端末に挿せば、それで動く。eSIM は1台の端末に紐づいたプロファイルなので、移すには通常、事業者から新しいコードをもらう必要があり、コードのなかには一度きりしか使えないものもある。旅の途中でスマホを失くしたり壊したりした場合、復旧が速いのは物理カードのほうだ。次に番号そのものについて。旅行用 eSIM のプランの多くはデータ専用で現地の番号を持たないため、予約や現地での通話に番号が必要なら、通常は物理のプリペイド SIM が番号込みの商品だ。
端末対応で eSIM が後れを取る
eSIM は万能ではなく、多くの旅がここで静かにプラスチック製カードに戻っていく。対応は近年のミドルレンジとハイエンドの端末に集中している。ここ数年、主要メーカーが発売したスマホのほとんどは eSIM を扱えるが、対応には穴がある。対応モデルと見た目が同じでも地域向けの派生版が非対応だったり、特定の市場では同じスマホの物理 SIM 2枚挿し版が出荷されたりする。多くの旅行者が予備機として持ち歩くような低価格帯・エントリークラスの端末は物理カードしか受け付けないことが多く、旧型の端末は定義上そうだ。見落とされやすい制約がもうひとつある。スロットの数え方だ。ほとんどのスマホは複数の eSIM プロファイルを保存できるが、物理トレイ1つと同時に有効化できるのは1回線か2回線に限られる。eSIM の枠をすでに仕事用の回線に使っていて、物理トレイが空いているなら、実際に使える枠は物理カードのほうだ。買う前に確認したいのは、正確な型番が eSIM に対応していること、端末が SIM ロックされていないこと、そして同時に何回線まで動かせるかを数えることだ。
旅のタイプ別にどちらを買うか
どちらかが完全に勝つわけではない。次の順に当てはめていくと、答えはおおむね自然に決まる。スマホが eSIM に対応していないなら物理カード。予備の端末が古い、あるいは低価格帯なら物理カード。データ通信よりも通話用の現地番号が必要なら物理カードだ。旅行用 eSIM のプランのほとんどは番号を含まない。eSIM の枠がすでに埋まっていて物理トレイが空いている場合も物理カード。チャージしながら使いたい長期滞在で現地のプリペイド商品が欲しいとき、そして復旧のしやすさを重視するときも物理カードだ。スマホが壊れたとき、カードなら移すだけで済むが、eSIM は新しいコードを取り直すことになる。逆に、スマホが対応していて、旅がよくある形——1〜2週間、1か国か1地域、店を探し回りたくない時間帯の到着——なら eSIM を選ぶ。1つの地域プランで複数の国境を越えられるのに対し、物理カードは国ごとに分かれる傾向がある。最近のスマホを持つ旅行者の多くにとって、eSIM は摩擦の少ない選択肢だ。ただし万能なアップグレードではない。決めるのは端末と電話番号の要否であって、技術そのものではない。
よくある質問