頭の中の見積もりはおそらく高すぎる
自宅では、スマホは1日の大半を Wi-Fi の上で過ごし、アプリの更新、写真のアップロード、動画といった重いバックグラウンド処理は、気づかないうちにそこで行われる。旅行中も習慣はそのままだが、Wi-Fi は持っていかない。だから基準にしてしまうのは自宅での月間使用量であり、そこにはウォーキングツアーでは決して再現しない何時間分もの動画視聴が含まれている。それらを差し引けば、旅先での日常的な負荷は小さい。地図が移動に応じてダウンロードするのはタイルと経路データであって、衛星画像ではない。ナビを多用する日でも数十メガバイト単位で、事前にその地域をオフライン保存しておけばほぼゼロだ。テキストメッセージはほとんど容量を食わない。食うのは送受信する写真と動画である。メール、予約確認、交通系アプリ、たまの検索は、その上にわずかに乗る程度だ。移動とメッセージと調べもので過ごす普通の1日は、1ギガバイトを大きく下回り、数百メガバイト台に収まることも多い。それと実際に買われる量との差は、たいてい慎重さから生じるのではない。まったく別の種類の1日から組み立てられた、頭の中の予算なのである。
実際にデータを食う3つの行為
驚くほど大きな使用量のほとんどは3つの行為に由来し、それぞれ振る舞いが異なる。動画のストリーミング。短いクリップは軽いが、腰を据えた視聴——夜に何話も見る、試合を観る、列車で映画を観る——は軽くない。画質の設定も効いてくる。標準画質と高画質では差が大きい。高画質の動画1時間は、地図を丸1日使うより重い。出発前に Wi-Fi でダウンロードしておくか、ストリーミングアプリを低い画質に設定すれば、この大部分は消える。ノートPCへのテザリング。テザリングしたノートPCはスマホのようには振る舞わない。OS の更新を走らせ、クラウドフォルダを同期し、バックグラウンドのタブを生かし続け、メールの添付ファイルを勝手に取得する。そのため1時間でスマホ1日分に匹敵することがある。テザリングする前に、ノートPCの自動更新とクラウド同期を切っておきたい。クラウドへの写真・動画バックアップ。これが静かな落とし穴だ。スマホがすべての写真と動画をモバイルデータ通信でアップロードする設定になっていると、観光の1日で、1枚も見ないうちに何ギガバイトも押し出してしまう。バックアップを Wi-Fi のみにするか、旅行中はモバイル通信からのアップロードを切るのが、最も効果の大きい一手だ。他の2つは予測できるが、これは起きてからでないと忘れられている。
旅のスタイル別・容量設計の枠組み
容量の内訳を変えるのは、旅行の日数よりも旅のスタイルだ。都市観光は、ナビ、交通系アプリ、メッセージ、飲食店の検索、そして多少の SNS 投稿で回っていく。消費は少なく、予測しやすい。郊外への日帰り旅行はナビが増えるが、データはさほど増えない。本当の変数は夜の過ごし方で、ホテルの部屋で動画を見るのか、その日の写真をアップロードするのかで変わる。島やビーチの休暇は軽そうに見えて、そうではないことが多い。移動は減るが、自由時間がはるかに増え、その自由時間こそデータが消えていく場所だ。のんびりした旅が、詰め込んだ観光の旅を軽く上回ることがある。歩いていたはずの時間を、いまはスクロールに使っているからだ。出発前に見たいものをダウンロードしておき、動画は宿の Wi-Fi を使う。ロードトリップは、ナビを断続的ではなく連続して動かす。これも控えめだが持続する負荷で、リスクは後部座席の同乗者が動画を見たりタブレットをテザリングしたりするほうにある。田舎道は電波が弱いので、出発地点だけでなくルート全体の地図を保存しておきたい。リモートワークだけは毛色が違う。ビデオ通話は、普通の人がスマホで行う操作のなかで最も重く、それを丸1日の仕事としてノートPCにテザリングさせればさらに重い。画面共有が入るとなおさらだ。仕事をするなら、休暇よりかなり余裕をもった容量を選び、通話は宿の Wi-Fi に頼り、モバイルデータ通信はその合間のために取っておく。
なぜ「1日あたり」が間違った単位なのか
1日あたりで見積もる方法は直感的に思えるが、これが最もよくある間違いのもとだ。誰もデータを均等には使わない。使用量は山を作ってやって来て、平均値はその山を覆い隠す。動画を見た1晩、あるいはテザリングで作業した半日だけで、その前の1週間分すべてを超えることがある。それなのに「1日あたり約1ギガバイト」と見積もって日数を掛けると、自分の旅に山の日が3日あるのか、まったくないのかが分からない。しかもその3日が判断のすべてなのだ。ギガバイト単位で考えると、逆の進め方になる。重い項目を洗い出す。動画を何時間見るか、テザリングで何日働くか、写真が自動でアップロードされるか。それらを基準にプランを設計し、地図とメッセージは誤差として扱う。そのほうが、1日の平均を当て推量するより、ずっと正直に判断できる。1日あたりという枠組みには、もうひとつ罠がある。プランは容量と有効期間をひとまとめにしているが、この2つは連動しない。有効期間が長いからといって容量が多いとは限らず、容量が多くても思ったより早く失効することがある。日数はプランがいつ死ぬかを教え、ギガバイトはプランが生き延びるかを教える。まず旅行の日数を割り出し、次に重い項目、最後に容量を決める。
当て推量なしでプランの容量を決める方法
正しい順序で2つの計算をすれば、当て推量の大部分は消える。ひとつ目は、一般的な目安ではなく自分のスマホを見ることだ。端末はアプリごとの直近のデータ使用量を報告してくれるので、自宅で普通に過ごした1か月のあいだに、地図やメッセージアプリが実際にどれだけ消費したかを確認する。その数値は自分に合わせて調整されたもので、どんな経験則にもそれはできない。そして先ほどの指摘が具体的に見えてくる。心配していたアプリが一覧の上位に来ることはほとんどない。ふたつ目は、容量を選ぶ前に3つの重い項目を決めることだ。動画を見るか、ノートPCをテザリングするか、写真がモバイルデータ通信でアップロードされるか。どれも当てはまらないなら、追加チャージのできる小さめのプランが合理的な選択だ。ひとつでも当てはまるなら、1日の平均ではなくその項目に合わせて容量を決める。実践的には、動画はできるだけ Wi-Fi に回し、必要なとき以外はノートPCをテザリングせず、モバイル通信からの写真アップロードは切っておく。プランは一発勝負の買い物ではなく、あとから足せるものとして捉えたい。少し小さめに始めて足りなければ追加するほうが、使わない容量を抱え込むより無駄がない。購入前に正直に確認しておきたい点が2つある。eSIM はすべての端末で対応しているわけではなく、人気機種の一部の地域向け派生版にはまったく載っていないことがあるので、買う前に自分の型番を確認したい。そしてテザリングを許さないプランもある。見積もりがノートPCのテザリングに依存しているなら、これは大きな問題になる。どちらも事業者自身のページで確認したい。
よくある質問