旅行用 eSIM は置き換えではなく、2回線目
旅行用 eSIM をインストールしても、自分の番号には何も起こらない。eSIM は、すでにあるもの——トレイに入ったプラスチックの SIM、あるいはチップにすでに書き込まれたプロファイル——の隣に、追加の回線としてスマホに加わる。乗り換えも移行も解約もなく、自宅の通信事業者に何かが通知されることもない。 これは重要だ。「eSIM に切り替える」という言い回しは交換を連想させるからだ。旅行用プランの場合は交換ではない。同じチップにたまたま同居する、一時的な2回線目を買っているだけである。 実際の結果として、スマホは同時に2つの回線を抱えることになる。自分の番号は通話とメッセージ用に有効なままで、旅行用プランがデータ通信を引き受ける。周囲はこれまでどおりの番号で自分に連絡でき、地図、メッセージ、配車アプリもそのまま動く——データ通信に対して自宅の通信事業者のローミング料金を払うことなく。 ひとつだけ、やってはいけないこと。場所を空けるために物理 SIM を抜いたり、既存のプロファイルを削除したりしないことだ。スマホは両方を同時に動かせるように設計されている。
どちらの回線が何を担うか — 役割分担が重要な理由
2つの回線を動かすということは、それぞれの役割を決めるということだ。旅行中の実用的な初期設定はこうなる。データ通信は旅行用 eSIM、それ以外はすべて自分の番号に。 通話とメッセージは旅行用プランの仕事ではない。旅行用 eSIM のプランの多くはデータ専用で、運ぶのはインターネットの通信だけだ——発信元になる番号も、SMS を受け取る受信箱もない。自分の回線はそのまま、発着信とメッセージの送受信を続け、いつものメッセージアプリの身元を保つ。それが物理 SIM であれプロファイルであれ、変わらない。 一方、モバイルデータ通信は同時に1つの回線でしか動かない。既定のままにしておくと自宅のネットワークを使おうとし、海外ではそれが通常ローミング料金を意味する。データ通信を旅行用 eSIM に向けて初めて、この構成は見通しのよいものになる。インターネットは旅行用プランが、人とのやり取りは自宅の回線が担う。 旅行者によっては好む中間的な選択肢もある。旅行用プランに番号と通話時間が含まれているなら、通話にもそれを使える。現地の店に電話する必要がある場合には便利だ。ただしそのとき、発信するのは自分の番号ではなくなる。事故ではなく、意図した選択としてそうしよう。
データ通信を旅行用 eSIM に向ける方法
これは技術的な作業ではなく、設定の変更だ。出発前に自宅で済ませておけば、設定項目がどこにあるかを把握できる。 iPhone では「設定」を開き、「モバイル通信」(地域によっては「モバイルデータ通信」)を選ぶ。両方の回線が一覧に表示される。「モバイルデータ通信」をタップして旅行用の回線を選ぶ。次に旅行用回線の個別項目を開き、提供元の指示があれば「データローミング」をオンにする。旅行用プランは通常、渡航先の提携ネットワークに接続するため、その回線でローミングを有効にする必要がある。 自宅の回線には逆の設定をする。個別項目を開き、「データローミング」をオフにする。これで、意図しないバックグラウンド通信がローミング料金で請求されるのを防げる。回線そのものはオンのままにしておき、通話とメッセージが届くようにする。 Android でも同じ2つの判断が SIM またはネットワークの設定メニューにあり、多くは「モバイルデータ」のような素っ気ない名前で、通話と SMS 用は別項目になっている。データ通信には旅行用 eSIM を、通話とメッセージには通常の回線を選ぶ。 旅が終わったら元に戻す。データ通信を自宅の回線に戻し、プランの有効期限が切れたら旅行用の回線をオフにするか、プロファイルを削除する。
正直な限界 — デュアルスタンバイでは同時に1回線
ここが、販売用の文言がとかく飛ばしがちな部分だ。2つの回線を動かすスマホはデュアル SIM デュアルスタンバイ方式で、両方の回線が着信を受けられるが、必ずしも同じ瞬間とは限らない。 実際には、片方の回線が通話中のあいだ、もう片方の回線が「圏外」表示になることがある。つまり自分の番号で話している最中に、旅行用プランの番号にかけた相手は、そのままボイスメールに流れることがある。端末によっては、通話中に2回線目へかかってきた着信の不在着信通知が出ず、後になって初めて気づくこともある。 部分的な回避策はある。iPhone で「モバイルデータ通信の切り替えを許可」をオンにすると、データ回線が音声回線の接続を借りられるようになり、データを担っていない回線に着信が届きやすくなる。自宅の通信事業者が対応していれば、Wi-Fi 通話を使えば、非アクティブな回線をモバイル網ではなくインターネット経由で到達可能に保てる。 どれもこの構成を壊すものではないが、2つの番号で同時に連絡が取れると約束してはいけない。重要な着信が見込まれるなら、どちらの番号に来るかを前もって決め、その回線を空けておく。
自分の番号がログイン手段になっている場合
ここからは、番号を維持することが単なる便利さではなく、出発前に確認しておくべき事柄になる。 ワンタイムコード——銀行、仕事のログイン、配達アプリなどから届くもの——は、そのアカウントを持つ番号に SMS で届く。自宅の回線を有効にしておき、海外でも通信事業者がメッセージを配信するなら、コードは届き続け、旅行用 eSIM がそれを使うために必要なデータを静かに供給する。ただし、この配信は保証されていない。自宅の通信事業者と自分の契約次第であり、何かを有効にしないとメッセージがローミングされないプランもある。 だから、思い込まずに試しておきたい。まだ自宅にいるうちに旅行用の回線をデータ回線に設定し、自分の番号に SMS が届くかを確認する。銀行によっては登録済みの番号にしか送らないし、社内システムのログインでは海外に送られたコードをまったく受け付けないこともある。 出発前に代替手段を用意しておく。コードを生成する認証アプリ、印刷したバックアップコード、あるいは重要なアカウントへの別の入口だ。データ専用の旅行用プランはここでは役に立たない。番号がないので、SMS を送る先がないからである。
よくある質問